カテゴリ:米国高配当株・配当投資・税金・資産形成


はじめに|配当金、満額もらえていますか?

米国の高配当株やETFに投資して、いざ配当金が口座に入ってきたとき、「あれ、思っていたより少ない」と感じたことはありませんか。実はそれ、気のせいではありません。米国株の配当金には、日本とアメリカの両方で税金がかかる「二重課税」という仕組みがあるからです。

前回の【米国高配当株シリーズ④】では、減配リスクとバリュートラップの見抜き方を解説しました。今回はテーマを変えて、配当金を受け取るうえで避けて通れない「税金」の話をします。仕組みを正しく理解すれば、払いすぎた税金の一部を取り戻すこともできます。少し難しく聞こえるかもしれませんが、できるだけかみ砕いて説明していきますので、ご安心ください。


米国株の配当には2回税金がかかる

まず押さえておきたいのが、米国株の配当金は「アメリカ」と「日本」の2段階で課税されるという点です。これを二重課税といいます。順番に見ていきましょう。

配当金が手元に届くまでの流れ

  ① 米国企業が配当を支払う(例:100ドル)
     ↓ アメリカで源泉徴収 10%
  ② 90ドルが日本の証券口座に届く
     ↓ 日本で課税 20.315%
  ③ 最終的に手元に残るのは約71.7ドル

このように、まずアメリカ国内で10%が差し引かれ、その残りに対して日本でさらに20.315%が課税されます。結果として、額面100ドルの配当のうち、手元に残るのはおよそ72ドル前後になってしまうのです。「思ったより少ない」と感じる正体は、この二重の課税にあります。


それぞれの税率を整理する

二重課税の内訳を、表で整理しておきましょう。

ここで知っておきたいのが、本来アメリカの配当源泉税は30%だということです。しかし日本とアメリカの間には「租税条約」が結ばれており、所定の手続き(証券会社経由のW-8BENの提出など)をしておくことで、10%まで軽減されています。多くのネット証券では口座開設時に自動的に手続きされるため、特別な操作は不要なことがほとんどです。


払いすぎた税金を取り戻す「外国税額控除」

ここからが本題です。同じ配当金に対してアメリカと日本で二重に課税されるのは、納税者にとって不公平です。そこで用意されているのが「外国税額控除」という制度です。

外国税額控除とは、外国(この場合アメリカ)で支払った税金の一部を、日本で納める所得税・住民税から差し引いてくれる仕組みです。確定申告で手続きすることで、アメリカに支払った10%分の一部または全部が戻ってくる可能性があります。

外国税額控除のイメージ

  アメリカで払った税金(10%分)
     ↓ 確定申告で申請
  日本の所得税・住民税から差し引く
     ↓
  二重課税の一部が解消され、還付される

ただし、控除には上限があります。控除できる金額は、その年の所得や日本の納税額に応じて計算される「控除限度額」までと決まっており、必ずしも支払った外国税の全額が戻るわけではありません。とくに所得が少ない年や、他に納める税金が少ない場合は、控除しきれないこともあります。それでも、申告すれば取り戻せる可能性があるお金ですから、活用しない手はありません。


確定申告で必要になる手続き

外国税額控除を受けるには、確定申告が必要です。会社員の方で、ふだん確定申告をしていない場合でも、この控除のために申告することができます。大まかな流れは次のとおりです。

外国税額控除を受ける手順

  └ 証券会社から「年間取引報告書」を入手する
  └ 外国所得税額(米国で引かれた額)を確認する
  └ 確定申告書の「外国税額控除」欄に記入する
  └ 必要書類を添えて申告する

近年は、各ネット証券が外国税額控除の計算に必要な情報をまとめた書類を発行してくれるため、以前より手続きのハードルは下がっています。それでも不安な場合は、税務署の相談窓口や税理士に確認することをおすすめします。


新NISA口座の配当は要注意

ここで、新NISAとの関係について大切な注意点があります。新NISA口座で米国株や米国ETFを保有した場合、日本国内の税金(20.315%)は非課税になります。これは新NISAの大きなメリットです。

しかし、アメリカ側の源泉税10%は、新NISA口座であっても課税されてしまいます。さらに重要なのが、新NISAは日本国内では非課税であるがゆえに、外国税額控除が使えないという点です。控除はあくまで「日本で課税された税金」から差し引く仕組みのため、もともと非課税の新NISA口座では、差し引く相手がいないのです。

とはいえ、これは「新NISAが不利」という意味ではありません。日本の20.315%がまるごと非課税になるメリットのほうが、取り戻せない米国の10%よりはるかに大きいからです。新NISAで米国高配当株を持つこと自体は、依然として有力な選択肢です。


まとめ|仕組みを知れば手取りは増やせる

今回のポイントを振り返ります。

  • 米国株の配当は、アメリカ(10%)と日本(20.315%)で二重に課税されます
  • 額面100ドルの配当でも、手元に残るのはおよそ72ドル前後です
  • 課税口座であれば、確定申告で「外国税額控除」を使い、米国分の一部を取り戻せます
  • ただし控除には上限があり、全額が戻るとは限りません
  • 新NISA口座は日本分が非課税になる一方、米国の10%は課税され、外国税額控除は使えません

配当投資では、受け取る配当を増やすことと同じくらい、税金で目減りする分を抑えることが大切です。仕組みを知っているかどうかで、長い目で見た手取り額は大きく変わってきます。まずはご自身の口座でどのように課税されているかを確認することから始めてみましょう。

次回【米国高配当株シリーズ⑥】では、「米国高配当株でつくるポートフォリオの実例|年代別・目的別の組み方」をテーマに、実際の銘柄やETFをどう組み合わせるかを解説する予定です。ぜひお楽しみに。


本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資勧誘ではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。税制や制度の詳細は国税庁・金融庁の公式サイトをご確認ください。

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