この記事の要点
- はじめに|「この会社、本当に大丈夫?」を数字で確かめる方法
- アルトマンZスコアとは?
- Zスコアの計算式
- 5つの指標が意味すること
- Zスコアの目安|3つのゾーンで判定する
カテゴリ:米国株・財務分析・リスク管理
はじめに|「この会社、本当に大丈夫?」を数字で確かめる方法
前回の記事では、流動比率・当座比率を使って「1年以内の支払い能力」を確認する方法を解説しました。ただ、短期の支払い能力だけでは、企業が中長期的に倒産へ向かっていないかまでは判断しきれません。
そこで今回ご紹介するのがアルトマンZスコア(Altman Z-Score)です。Zスコアは、複数の財務指標を1つの数値にまとめ、企業の倒産リスクを総合的に判定するための指標です。
米国株では、高配当や割安さに惹かれて買った銘柄が、実は財務が悪化していて株価が下がり続ける「バリュートラップ」にはまることがあります。Zスコアを知っておけば、そうした危ない銘柄を事前にふるい落とせるようになります。一緒に見ていきましょう。
アルトマンZスコアとは?
アルトマンZスコアは、ニューヨーク大学のエドワード・アルトマン教授が1968年に発表した倒産予測モデルです。実際に倒産した企業と倒産しなかった企業の財務データを統計的に比較し、倒産を見分けるのに役立つ5つの指標を組み合わせて作られました。
ポイントは、「収益性」「財務健全性」「効率性」「市場からの評価」を1つの数値でまとめて見られることです。個別の指標を1つずつ見るよりも、企業全体の体力を手早く把握できます。
Zスコアの計算式
もともとのZスコア(上場製造業向け)は、次の式で計算します。
Z = 1.2×X1 + 1.4×X2 + 3.3×X3 + 0.6×X4 + 1.0×X5
X1 = 運転資本 ÷ 総資産
X2 = 利益剰余金 ÷ 総資産
X3 = EBIT(利払い・税引き前利益)÷ 総資産
X4 = 株式時価総額 ÷ 総負債
X5 = 売上高 ÷ 総資産※運転資本=流動資産−流動負債です。
5つの指標が意味すること
係数を見るとわかるとおり、最も重みが大きいのはX3(EBIT÷総資産)の3.3です。つまり、Zスコアは「本業でしっかり稼げているか」を特に重視しています。稼ぐ力が弱い企業は、ほかの指標が良くてもスコアが伸びにくい仕組みです。
Zスコアの目安|3つのゾーンで判定する
計算したZスコアは、次の3つのゾーンで判定します。
「1.81未満だから必ず倒産する」というわけではありませんが、財務の悪化を示すサインとして真剣に受け止めましょう。
具体例で計算してみましょう
架空の2社でZスコアを計算してみます(単位はすべて億ドル)。
【A社:安定した優良企業】
総資産1,000/運転資本150/利益剰余金300
EBIT120/時価総額1,600/総負債500/売上高1,100
X1:150÷1,000=0.15 × 1.2 = 0.18
X2:300÷1,000=0.30 × 1.4 = 0.42
X3:120÷1,000=0.12 × 3.3 = 0.40
X4:1,600÷500=3.20 × 0.6 = 1.92
X5:1,100÷1,000=1.10 × 1.0 = 1.10
→ Zスコア ≒ 4.02(安全圏)【B社:業績が悪化している企業】
総資産1,000/運転資本−50/利益剰余金−100
EBIT20/時価総額200/総負債800/売上高700
X1:−50÷1,000=−0.05 × 1.2 = −0.06
X2:−100÷1,000=−0.10 × 1.4 = −0.14
X3:20÷1,000=0.02 × 3.3 = 0.07
X4:200÷800=0.25 × 0.6 = 0.15
X5:700÷1,000=0.70 × 1.0 = 0.70
→ Zスコア ≒ 0.72(危険圏)B社は運転資本も利益剰余金もマイナスで、本業の利益も小さく、借金に対して時価総額が小さい状態です。仮に配当利回りが高く見えても、Zスコアがここまで低い場合は、減配や財務悪化のリスクを疑ったほうがよいでしょう。
非製造業向けの修正版「Z''スコア」
もともとのZスコアは製造業向けに作られたため、資産をあまり持たないサービス業やIT企業では、X5(売上高÷総資産)が大きく出すぎることがあります。そこでアルトマン教授は、非製造業や新興国企業にも使える修正版(Z''スコア)を発表しています。
Z'' = 6.56×X1 + 3.26×X2 + 6.72×X3 + 1.05×X4
※X4は「純資産(簿価)÷総負債」に置き換え
※X5(売上高÷総資産)は使わない
目安:2.60超=安全圏/1.10〜2.60=グレーゾーン/1.10未満=危険圏分析する企業の業種に合わせて、どちらの式を使うかを選びましょう。
Zスコアを使うときの注意点
Zスコアは便利ですが、万能ではありません。次の点に気をつけてください。
1. 銀行・保険など金融機関には使えない
金融機関は預金や保険契約を負債として抱えるビジネスモデルのため、Zスコアの前提に合いません。金融株の分析には自己資本比率など別の指標を使いましょう。
2. 自社株買いが多い企業は低く出ることがある
米国の大型株には、自社株買いを積極的に行った結果、純資産や利益剰余金が小さく見える企業があります。こうした企業はZスコアやZ''スコアが実態より低く出る場合があるため、フリーキャッシュフローやインタレストカバレッジレシオとあわせて判断することが大切です。
3. 1回の数値より「推移」を見る
Zスコアは決算ごとに変化します。安全圏からグレーゾーンへ、グレーゾーンから危険圏へと下がり続けている企業は要注意です。最低でも3〜5年分の推移を確認しましょう。
4. 時価総額の影響を受ける
X4は株価で変動するため、相場全体が急落した局面ではZスコアも一時的に下がります。株価下落だけが原因なのか、本業の悪化が原因なのかを切り分けて見ることが大切です。
Zスコアの実践的な使い方
【おすすめの活用ステップ】
① 高配当株・割安株の候補をリストアップする
② Zスコア(または Z''スコア)を計算し、危険圏の銘柄を除外する
③ グレーゾーンの銘柄は、流動比率・D/Eレシオ・FCFで追加確認する
④ 保有中の銘柄は決算ごとにZスコアの推移をチェックするZスコアは「買う銘柄を選ぶ指標」というより、「避けるべき銘柄をふるい落とすための指標」として使うのがおすすめです。ほかの財務指標と組み合わせることで、より確かな判断ができるようになります。
まとめ
・アルトマンZスコアは5つの財務指標を合成した倒産予測モデル
・最も重視されるのは本業の稼ぐ力(EBIT÷総資産)
・2.99超は安全圏、1.81未満は危険圏が目安
・非製造業には修正版のZ''スコアを使う
・金融機関には使えず、自社株買いが多い企業は低く出ることもある
・1回の数値より、数年分の推移で判断する高配当や割安さだけで銘柄を選ぶと、思わぬ財務リスクを抱えることがあります。Zスコアを「最初のふるい」として取り入れ、安心して長く保有できる銘柄選びに役立ててください。
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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資勧誘ではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。制度の詳細は金融庁公式サイトをご確認ください。
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