この記事の要点
- はじめに|「安い株」が本当にお得かを9つの質問で確かめる
- ピオトロスキーFスコアとは?
- Fスコアの9つのチェック項目
- グループ1:収益性(4項目)
- グループ2:財務の安全性(3項目)
カテゴリ:米国株・財務分析・銘柄選び
はじめに|「安い株」が本当にお得かを9つの質問で確かめる
前回の記事では、アルトマンZスコアを使って倒産リスクの高い企業をふるい落とす方法を解説しました。Zスコアは「危ない企業を避ける」ための指標でしたが、投資家としては一歩進んで「これから良くなっていく企業」を見つけたいところです。
そこで今回ご紹介するのがピオトロスキーFスコア(Piotroski F-Score)です。Fスコアは、決算書から読み取れる9つの項目に「はい=1点/いいえ=0点」で答えていくだけで、企業の財務が改善しているのか悪化しているのかを0〜9点で判定できる指標です。
PERやPBRが低い割安株の中には、業績が悪いから安いだけの「バリュートラップ」が紛れています。Fスコアを使えば、割安株の中から財務が着実に良くなっている企業を選び出せるようになります。一緒に見ていきましょう。
ピオトロスキーFスコアとは?
ピオトロスキーFスコアは、会計学者のジョセフ・ピオトロスキー氏が2000年に発表した論文で提唱した財務スコアリング手法です。当時シカゴ大学に在籍していたピオトロスキー氏は、PBRが低い(簿価に比べて株価が安い)銘柄を対象に、財務の改善度合いで点数をつけると、その後の株価パフォーマンスに大きな差が出ることを示しました。
論文では、割安株の中でスコアが高いグループと低いグループの間に、年率で20%を超えるリターン差があったと報告されています。もちろん過去の検証結果であり将来を保証するものではありませんが、「シンプルなチェックリストでも銘柄選びの精度を上げられる」ことを示した研究として、今も多くの投資家に使われています。
Fスコアの大きな特徴は、複雑な計算や将来予測が不要なことです。今期と前期の決算書を見比べるだけで判定できるため、初心者の方でも取り入れやすい指標です。
Fスコアの9つのチェック項目
9つの項目は「収益性」「財務の安全性」「経営効率」の3つのグループに分かれています。
グループ1:収益性(4項目)
特に大切なのが④です。会計上の利益は見積もりや計上タイミングで膨らませることができますが、現金の出入りであるキャッシュフローはごまかしにくい数字です。営業CFが純利益を上回っていれば、「利益が現金の裏付けを持っている」と判断できます。
グループ2:財務の安全性(3項目)
⑦の新株発行は意外に感じるかもしれません。業績が苦しい企業は、借入が難しくなると新株を発行して資金を集めることがあります。新株発行は既存株主の持ち分を薄める(希薄化)ため、マイナスのサインとして扱われます。
グループ3:経営効率(2項目)
粗利率の改善は価格決定力やコスト管理の向上を、総資産回転率の改善は資産をより効率よく売上につなげていることを表します。
Fスコアの目安|点数の読み方
9項目の合計点で、企業の財務の方向性を判定します。
一般的には8点以上を「強い」、2点以下を「弱い」とする見方が多く使われます。3〜4点の企業も、財務が悪化に向かっている可能性があるため慎重に見ましょう。
具体例で計算してみましょう
架空の2社でFスコアを計算してみます。どちらもPBRが低い「割安株」です。
【A社:業績回復中の割安株】
① ROA:+4.0%(プラス)→ 1点
② 営業CF:+12億ドル(プラス)→ 1点
③ ROA:前期2.5% → 当期4.0%(上昇)→ 1点
④ 営業CF12億ドル > 純利益8億ドル → 1点
⑤ 長期負債比率:35% → 30%(低下)→ 1点
⑥ 流動比率:1.3倍 → 1.5倍(上昇)→ 1点
⑦ 新株発行なし → 1点
⑧ 粗利率:38% → 40%(上昇)→ 1点
⑨ 総資産回転率:0.80回 → 0.78回(低下)→ 0点
→ Fスコア = 8点(財務が強く改善中)【B社:業績悪化中の割安株】
① ROA:+1.0%(プラス)→ 1点
② 営業CF:+3億ドル(プラス)→ 1点
③ ROA:前期3.0% → 当期1.0%(低下)→ 0点
④ 営業CF3億ドル < 純利益5億ドル → 0点
⑤ 長期負債比率:40% → 46%(上昇)→ 0点
⑥ 流動比率:1.2倍 → 1.0倍(低下)→ 0点
⑦ 新株を発行して資金調達 → 0点
⑧ 粗利率:30% → 27%(低下)→ 0点
⑨ 総資産回転率:0.90回 → 0.85回(低下)→ 0点
→ Fスコア = 2点(財務が弱い・悪化中)PERやPBRだけを見ると、どちらも同じように「割安」に見えるかもしれません。しかしFスコアで比べると、A社は財務が改善している一方、B社は借金が増え、利益の質も落ちていることがわかります。B社のように「安いのには理由がある」銘柄を避けられるのが、Fスコアの強みです。
Fスコアを使うときの注意点
1. 割安株のスクリーニングで特に効果を発揮する
Fスコアは、もともとPBRが低い割安株を対象に検証された指標です。成長株やすでに高く評価されている大型株に当てはめても、同じような効果が出るとは限りません。「割安株の中から良いものを選ぶ道具」と考えるのが基本です。
2. 自社株買いが多い企業は一部の項目が不利になる
米国企業には、自社株買いで純資産が小さくなっている企業や、借入で自社株買いを行う企業があります。この場合、⑤の長期負債比率が悪化して見えることがあります。数字の背景にある資本政策まで確認しましょう。
3. 金融機関や一時的な要因には注意する
銀行や保険会社は負債や流動比率の意味合いが一般企業と異なるため、Fスコアをそのまま当てはめるのは向いていません。また、資産売却などの一時的な利益でROAが上がった場合も、点数が実態より良く見えることがあります。
4. 「変化の方向」を見る指標であることを理解する
Fスコアは9項目のうち多くが「前期より良くなったか」を問う設計です。もともと非常に優秀な企業は改善の余地が小さく、満点を取りにくい場合があります。点数だけで企業の絶対的な優劣を決めつけないようにしましょう。
Fスコアの実践的な使い方
【おすすめの活用ステップ】
① PER・PBRなどで割安株の候補をリストアップする
② アルトマンZスコアで倒産リスクの高い銘柄を除外する
③ 残った銘柄のFスコアを計算し、7〜8点以上の銘柄に絞り込む
④ FCF利回りやROICで「稼ぐ力」と株価の妥当性を最終確認する
⑤ 保有後も決算ごとにFスコアの推移をチェックするZスコアが「避けるべき銘柄をふるい落とす指標」だとすれば、Fスコアは「割安株の中から改善中の銘柄を選び出す指標」です。2つを組み合わせることで、守りと攻めの両方から銘柄を絞り込めます。
まとめ
・ピオトロスキーFスコアは9つの項目を0/1で採点する財務スコア
・収益性4項目、財務の安全性3項目、経営効率2項目で構成
・8〜9点は財務が強く改善中、0〜2点は弱いサイン
・営業CFが純利益を上回るか(利益の質)が特に重要
・割安株のバリュートラップを避けるスクリーニングで効果的
・成長株や金融機関には向かず、点数は「変化の方向」を表す割安株投資で失敗しやすいのは、「安い理由」を確かめずに買ってしまうことです。Fスコアという9つの質問を習慣にして、財務がしっかり改善している企業を選ぶ目を養っていきましょう。
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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資勧誘ではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。制度の詳細は金融庁公式サイトをご確認ください。
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