この記事の要点
- はじめに|配当利回りの「高さ」より大切なのは「続くかどうか」です
- 配当性向とは?利益のうち何%を配当に回しているか
- 配当性向の一般的な目安
- 配当カバー率とは?配当を何倍の利益で支えているか
- EPSベースだけでは不十分|FCFベースの配当性向も確認しましょう
カテゴリ:財務指標・高配当株・銘柄分析
はじめに|配当利回りの「高さ」より大切なのは「続くかどうか」です
配当利回りが5%、6%と高い米国株を見つけると、つい買いたくなりますよね。しかし、利回りが高い銘柄の中には、稼ぎに対して無理をして配当を払っている企業や、株価が急落した結果として利回りが高く見えているだけの企業も含まれています。
そこで役立つのが、配当性向と配当カバー率です。この2つの指標を使えば、「その配当は利益や現金でまかなえているのか」「あとどれくらい余裕があるのか」を数字で確認できます。
この記事では、配当性向・配当カバー率の計算式と目安、EPSベースとFCFベースの違い、業種ごとの見方、減配が近いサインまでを、架空企業の例を使ってわかりやすく解説します。
配当性向とは?利益のうち何%を配当に回しているか
配当性向(Payout Ratio)は、企業が稼いだ利益のうち、どれだけを配当として株主に支払っているかを示す指標です。
配当性向(%)= 1株あたり配当(DPS)÷ 1株あたり利益(EPS)× 100
例)A社:EPS 5ドル、年間配当 2ドル
配当性向 = 2 ÷ 5 × 100 = 40%A社は利益の40%を配当に回し、残り60%を設備投資や自社株買い、借金の返済などに使える計算です。配当性向が低いほど「配当を払ってもまだ余裕がある」状態と考えられます。
配当性向の一般的な目安
ただし、この目安はあくまで一般論です。後述するとおり、業種によって「適正な配当性向」は大きく異なります。
配当カバー率とは?配当を何倍の利益で支えているか
配当カバー率(Dividend Cover)は、配当性向を裏返した指標です。利益が配当の何倍あるかを示します。
配当カバー率(倍)= EPS ÷ 1株あたり配当
= 1 ÷ 配当性向
例)A社:EPS 5ドル ÷ 配当 2ドル = 2.5倍一般に、配当カバー率が2倍以上なら余裕がある、1.5倍前後ならおおむね安定、1倍を下回ると利益だけでは配当をまかなえていない状態と考えられます。配当性向と中身は同じですが、「何倍の余裕があるか」という形で直感的に把握しやすいのが特徴です。
EPSベースだけでは不十分|FCFベースの配当性向も確認しましょう
配当は「利益」ではなく「現金」で支払われます。会計上の利益(EPS)は減価償却や一時的な損益の影響を受けるため、実際の現金の流れと一致しないことがあります。そこで、フリーキャッシュフロー(FCF)ベースの配当性向もあわせて確認しましょう。
FCF配当性向(%)= 配当支払総額 ÷ フリーキャッシュフロー × 100
FCF = 営業キャッシュフロー − 設備投資架空企業で比べてみましょう
B社とC社は、EPSで見ると同じ配当性向です。しかしC社は、設備投資が重く手元に残る現金が配当より少ない状態です。不足分を借入や手元資金の取り崩しで埋めている可能性があり、この状態が続くと減配リスクが高まります。EPSとFCFの両方で確認することが、配当の持続性を見抜く基本です。
業種によって「適正な配当性向」は違います
利益が安定している業種ほど、高い配当性向でも配当を維持しやすくなります。逆に、景気によって利益が大きく変動する業種では、低めの配当性向でも安心できません。
REITはEPSではなくAFFOで判断しましょう
REITは、不動産の減価償却費が大きいため、会計上の利益(EPS)が小さく見えがちです。EPSベースで配当性向を計算すると100%を大きく超えることも珍しくありません。
そのためREITでは、減価償却費を足し戻したFFO(Funds From Operations)や、そこから維持のための設備投資などを差し引いたAFFO(Adjusted FFO)を使って配当性向を判断するのが一般的です。
REITの配当性向 = 1口あたり配当 ÷ 1口あたりAFFO × 100AFFOベースで80〜90%程度に収まっていれば、比較的安定していると考えられます。
減配が近いサイン|こんな状態は要注意です
配当性向・配当カバー率を使って、次のようなサインがないかチェックしましょう。
【減配リスクのチェックリスト】
□ EPSベースの配当性向が2〜3年連続で上昇している
□ FCFベースの配当性向が100%を超える状態が続いている
□ 配当カバー率が1倍を下回っている
□ 配当を維持するために借入金(有利子負債)が増えている
□ 減益なのに無理に増配を続けている
□ 配当利回りが同業他社より極端に高い(株価急落の可能性)特に「配当性向の上昇」は、利益が伸びないまま配当だけが増えていることを意味します。連続増配の記録を守るために無理をしているケースもあるため、数年分の推移で確認することが大切です。
減配リスク全般の考え方や「配当の罠(バリュートラップ)」については、減配リスクを見抜く方法|配当の罠(バリュートラップ)を避ける【米国高配当株シリーズ④】もあわせて参考にしてください。
配当性向を使うときの注意点
一時的な損益でブレることがあります
資産の売却益や減損損失など、一時的な要因でEPSが大きく変動すると、配当性向も実態とずれた数字になります。一時的な要因を除いた「調整後EPS」や、複数年の平均で確認しましょう。
自社株買いは含まれません
配当性向には、自社株買いによる還元が含まれません。配当と自社株買いをあわせた還元姿勢を見たい場合は、総還元性向や株主還元利回りを使いましょう。
低すぎる配当性向が悪いわけではありません
配当性向が低い企業は、利益を成長投資に回しているケースが多く、将来の増配余地が大きいとも言えます。「今の利回り」だけでなく「将来の配当成長」も含めて判断しましょう。
まとめ|配当性向とカバー率で「続く配当」を選びましょう
・配当性向 = 配当 ÷ EPS。利益のうち何%を配当に回しているか
・配当カバー率 = EPS ÷ 配当。配当を何倍の利益で支えているか
・EPSベースとFCFベースの両方で確認するのが基本
・適正水準は業種によって異なる(REITはAFFOで判断)
・配当性向の上昇、FCF配当性向100%超えの継続は減配のサイン配当利回りの高さだけで銘柄を選ぶのではなく、配当性向と配当カバー率で「その配当がこの先も続くか」を確認する習慣をつけましょう。次回は、EPS成長率・売上成長率の見方と、決算発表で市場予想と比べる読み方を解説します。
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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資勧誘ではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。制度の詳細は金融庁公式サイトをご確認ください。
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