この記事の要点
- はじめに|「成長している」を数字で確かめましょう
- EPS成長率・売上成長率とは?
- 2つの成長率の組み合わせで「成長の質」がわかります
- 前年同期比・前期比・CAGRの使い分け
- 成長率の目安
カテゴリ:財務指標・成長株・決算分析
はじめに|「成長している」を数字で確かめましょう
「売上が過去最高」「EPSが大幅増」といったニュースを見ると、その企業は順調に成長しているように感じますよね。しかし、株価はニュースの見出しどおりには動きません。好決算なのに株価が下がることもあれば、減益なのに株価が上がることもあります。
その理由を理解するカギが、EPS成長率・売上成長率と、市場予想(コンセンサス)との比較です。株価は「どれだけ成長したか」だけでなく、「市場が期待していたより良かったか・悪かったか」に反応します。
この記事では、EPS成長率・売上成長率の計算式と目安、前年同期比とCAGRの使い分け、決算で市場予想と比べる読み方、調整後EPSの注意点までを、架空企業の例を使ってわかりやすく解説します。
EPS成長率・売上成長率とは?
売上成長率は、企業の「規模」がどれだけ大きくなったかを示します。EPS成長率は、株主1株あたりの「利益」がどれだけ増えたかを示します。
売上成長率(%)=(今期の売上高 − 前期の売上高)÷ 前期の売上高 × 100
EPS成長率(%)=(今期のEPS − 前期のEPS)÷ 前期のEPS × 100
例)A社:売上高 100億ドル → 112億ドル、EPS 4.00ドル → 4.80ドル
売上成長率 = 12%、EPS成長率 = 20%A社は売上の伸び(12%)よりもEPSの伸び(20%)が大きくなっています。これは、利益率の改善や自社株買いによる株数の減少などで、売上以上に1株あたり利益が伸びたことを意味します。
2つの成長率の組み合わせで「成長の質」がわかります
売上が伸びないままEPSだけが伸びている場合は、コスト削減や自社株買いで「数字を作っている」可能性があります。長期的には、売上の成長が利益成長の土台になることを覚えておきましょう。
前年同期比・前期比・CAGRの使い分け
成長率には、比べる期間によっていくつかの種類があります。
小売業のように年末商戦で売上が大きく膨らむ業種では、前期比だと季節要因で数字がぶれます。そのため、米国株の決算では前年同期比(YoY)で評価するのが一般的です。
長期の成長力を見るときはCAGR(年平均成長率)を使いましょう。
CAGR(%)=(最終年の値 ÷ 最初の年の値)^(1 ÷ 年数)− 1
例)B社:EPSが5年で 2.00ドル → 4.00ドル
CAGR =(4.00 ÷ 2.00)^(1/5)− 1 ≒ 14.9%1年だけの成長率は、前年が落ち込んでいた反動(ベース効果)で大きく見えることがあります。3〜5年のCAGRで確認すると、一時的なブレに惑わされにくくなります。
成長率の目安
一般的に、売上成長率が年5%前後なら安定成長、10〜20%なら高成長、20%超なら急成長と考えられます。ただし、業種や企業規模によって「普通の成長率」は大きく異なるため、同業他社や過去の推移と比べることが大切です。
決算発表は「市場予想との差」で読みましょう
株価の反応を理解するうえで最も重要なのが、市場予想(コンセンサス予想)との比較です。コンセンサス予想とは、その企業を担当するアナリストの予想の平均値のことです。
株価には、市場の期待があらかじめ織り込まれています。そのため、実績が予想を上回る(ビート)か、下回る(ミス)かが、短期的な株価の方向を左右します。
架空企業で比べてみましょう
C社は30%もの高成長ですが、市場はさらに高い成長を期待していたため「期待外れ」と受け止められます。反対にD社は低成長でも、予想を上回ったことが好感されます。「成長率の高さ」と「株価の反応」は別物だと理解しておきましょう。
決算でチェックしたい3つのポイント
【決算チェックリスト】
□ 売上高は市場予想を上回ったか(ビート/ミス)
□ EPSは市場予想を上回ったか(ビート/ミス)
□ 次の四半期・通期のガイダンス(会社予想)は市場予想より強いか特に重要なのがガイダンスです。今期の実績が予想を上回っても、次期のガイダンスが市場予想を下回れば、株価が下がることは珍しくありません。株式市場は「過去」よりも「これから」を重視するためです。
決算発表の基本的な読み方(決算資料の探し方や決算カンファレンスコールの聞き方など)は、米国株の決算発表の読み方|EPS・売上高・ガイダンスをチェックするポイント【米国個別株投資シリーズ⑤】もあわせて参考にしてください。
EPS成長率を見るときの注意点
GAAP EPSと調整後EPSの違いを確認しましょう
米国企業は、会計基準に基づくGAAP EPSに加えて、一時的な費用や株式報酬費用などを除いた調整後EPS(Non-GAAP EPS)を公表することが多くあります。市場予想は調整後EPSで比べられることが一般的ですが、調整後EPSは企業が自由に除外項目を決められるため、実態より良く見えることがあります。GAAP EPSとの差が大きく広がり続けていないか確認しましょう。
自社株買いによるEPSの押し上げ
自社株買いで発行済株式数が減ると、純利益が変わらなくてもEPSは増えます。EPS成長率だけでなく、純利益そのものの成長率もあわせて確認すると、本当の稼ぐ力が見えてきます。株数の増減(希薄化)については、次回詳しく解説します。
為替や買収(M&A)の影響
海外売上の多い米国企業は、ドル高になると売上が目減りして見えます。また、他社を買収すると売上が一気に増えます。決算資料に記載される為替影響を除いた成長率やオーガニック成長率(買収の影響を除いた成長率)も確認しましょう。
成長率は「株価の割高・割安」とセットで判断しましょう
どれだけ成長率が高くても、株価がそれ以上に期待を織り込んでいれば割高です。成長率とPERを組み合わせたPEGレシオや、株価に織り込まれた期待成長率を逆算する逆DCFと組み合わせて判断しましょう。
まとめ|成長率と市場予想の両方で決算を読みましょう
・売上成長率は「規模」、EPS成長率は「1株あたり利益」の伸びを示す
・売上の伸びを伴わないEPS成長は持続性に注意
・四半期は前年同期比(YoY)、長期は3〜5年のCAGRで確認
・株価は成長率の高さより「市場予想とのズレ」とガイダンスに反応する
・調整後EPS、自社株買い、為替・M&Aの影響も確認する「何%成長したか」だけでなく、「市場は何%を期待していたか」「その成長は売上に裏付けられているか」まで確認する習慣をつけると、決算発表を見る目が大きく変わります。次回は、1株あたり指標と希薄化、SBC(株式報酬)がEPSに与える影響を解説します。
関連記事
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資勧誘ではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。制度の詳細は金融庁公式サイトをご確認ください。
タグ: #EPS成長率 #売上成長率 #決算分析 #市場予想 #財務指標 #資産形成 #投資初心者 #東京米国株クラブ
