この記事の要点
- はじめに|指標は「組み合わせ」で初めて力を発揮します
- なぜ指標を1つだけで選んではいけないのか
- 5つの視点で絞り込むスクリーニング手順
- 各ステップのチェック項目と目安
- 具体例で流れを確認しましょう
カテゴリ:財務指標・スクリーニング・米国株
はじめに|指標は「組み合わせ」で初めて力を発揮します
前回の【財務指標・バリュエーション分析シリーズ⑲】では、希薄化とSBC(株式報酬)の影響を解説しました。このシリーズも、今回の⑳で完結です。
ここまで、PERやPBRから始まり、ROIC、FCF、財務健全性、配当性向、成長率、希薄化まで、全部で19本の指標を学んできました。ただ、指標をひとつずつ知っているだけでは、実際の銘柄選びには使いにくいですよね。
そこで最終回では、これまでの指標を組み合わせたスクリーニング(銘柄の絞り込み)の実践方法をまとめます。最後に、シリーズ全体の振り返りもできるようにしてあります。
なぜ指標を1つだけで選んではいけないのか
1つの指標だけで銘柄を選ぶと、次のような罠にはまりやすくなります。
・PERだけで選ぶ → 業績悪化中の「バリュートラップ」を拾いやすい
・配当利回りだけで選ぶ → 減配寸前の高利回り株を掴みやすい
・成長率だけで選ぶ → 割高な株を高値で買いやすい
・EPSだけで見る → 自社株買いや希薄化による見かけの数字に惑わされる指標にはそれぞれ得意・不得意があります。複数の視点から弱点を補い合うことで、判断の精度が上がります。
5つの視点で絞り込むスクリーニング手順
おすすめは、次の5つのステップで上から順に絞り込んでいく方法です。
割安度を最後に見るのがポイントです。最初に「安い株」から探すと、危ない企業が混ざりやすくなります。先に「良い企業」を絞り込み、そのあとで「その価格が妥当か」を確認するほうが、失敗しにくい流れです。
各ステップのチェック項目と目安
以下は、あくまで一般的な目安です。業種によって水準は大きく異なるため、同じ業種の企業どうしで比べるようにしましょう。
【ステップ① 財務健全性】
・ネット有利子負債/EBITDA:3倍以下が目安
・インタレストカバレッジ:3倍以上が目安
・アルトマンZスコア:安全圏(約3以上)かを確認
【ステップ② 収益性】
・ROIC:資本コスト(WACC)を上回っているか
・営業利益率:業種平均より高く、安定しているか
・ピオトロスキーFスコア:7点以上が目安
【ステップ③ 成長性】
・売上・EPSの5年CAGRがプラスで安定しているか
・決算で市場予想(コンセンサス)を継続的に上回っているか
【ステップ④ 株主還元・質】
・配当性向:EPS基準・FCF基準の両方で無理がないか
・発行済株式数が年平均1〜2%以上増えていないか
・FCFからSBCを引いた「実質FCF」もプラスか
【ステップ⑤ 割安度】
・PER、EV/EBITDAが自社の過去平均や同業他社と比べて妥当か
・FCF利回りが十分か
・逆DCFで、今の株価が織り込む成長率が現実的か具体例で流れを確認しましょう
架空の3社で、スクリーニングの流れを確認します。
A社のように「安く見える会社」を早めに外し、B社のように「良い会社だが高すぎる会社」は待つ判断ができます。C社のように全ステップを通った企業が、次に決算書を読み込む候補になります。
スクリーニングを使うときの注意点
スクリーニングは便利ですが、万能ではありません。次の点に注意しましょう。
① 指標は過去のデータであり、将来を保証しない
② 金融業や不動産などは、一般的な指標が当てはまりにくい
③ 数字に出ない要素(競争優位、経営陣、ビジネスの変化)は別途確認が必要
④ 一時的な特殊要因で、指標が歪んでいることがある
⑤ 基準を厳しくしすぎると、候補がゼロになるスクリーニングの役割は、調べる価値のある候補を効率よく絞ることです。最終的な判断は、事業内容や決算書を自分の目で確認したうえで行いましょう。スクリーニングに通った銘柄を「買う」のではなく、「深く調べる」のが正しい使い方です。
シリーズ全体の振り返り
このシリーズで学んだ指標を、目的別に振り返っておきましょう。
- 割安度を測る:PER・PBR(①)、PEGレシオ(②)、EV/EBITDA(③)、PSR(⑧)、DCF(⑩)、逆DCF(⑪)
- 稼ぐ力を測る:ROE・ROA(④)、利益率(⑦)、ROIC(⑨)、ピオトロスキーFスコア(⑯)
- 現金を見る:FCFとFCF利回り(⑤)、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(⑬)
- 財務の健全性を測る:D/Eレシオ(⑥)、流動比率(⑭)、アルトマンZスコア(⑮)
- 株主還元を見る:株主還元利回り(⑫)、配当性向(⑰)
- 成長と質を見る:EPS・売上成長率(⑱)、希薄化とSBC(⑲)
まとめ|「良い企業を、妥当な価格で」を数字で確認しましょう
・指標は1つではなく、複数を組み合わせて使う
・順番は「健全性 → 収益性 → 成長性 → 還元・質 → 割安度」
・割安度は最後に確認し、バリュートラップを避ける
・目安は業種ごとに違うため、同業他社と比べる
・スクリーニングは「買う銘柄」ではなく「調べる銘柄」を絞る道具全20回にわたるシリーズをお読みいただき、ありがとうございました。指標を一つひとつ理解し、組み合わせて使えるようになれば、ニュースや他人の意見に振り回されにくくなります。ぜひ気になる銘柄で、ご自身でもスクリーニングを試してみてください。
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本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資勧誘ではありません。投資は自己責任のもとで行ってください。制度の詳細は金融庁公式サイトをご確認ください。
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